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【始業式で話したこと②】(8/30)

 さて、それでは二つ目の私の夏休みの体験を話しましょう。もう知っている人も多いと思いますが、今年も私はカンボジアに行ってきました。私のカンボジア旅行は3年連続4回目ですが、家族に「そのうちカンボジアに住むのでないか」と疑われるほど、カンボジアへの思いは年々強くなっています。私がカンボジアに行く理由、というか動機は概ね次の3つになります。

 一つ目は、世界遺産のアンコールワットに代表される遺跡の数々をこの目で見たいということ。特にアンコールワットの朝陽は圧巻で、どんな天候であっても美しい。そして、いつ見ても景色が違う。偉大な自然―被造物―と人間が造った建造物が見事に調和した姿には、まさに「魅せられる」という表現がぴったりです。まだ真っ暗な5時から懐中電灯を片手に敷地に入り、2時間ほどそこにいるだけなのですが、本当に時間を忘れます。ちなみに現地のNPOスタッフで愛徳学園にも来られたことがあるカンボジア人のナヴィンさんにも、私のアンコールワット愛が認知されているほどで、「校長先生と言えばアンコールワット」だそうです。さらに、現地で出会うカンボジアの人たちの果てしない善良性。とにかく笑顔が素敵。お店に入ったら必ず手を合わせて「スースダイ(こんにちは)」、お店を出るときも手を合わせて「オックン・チュラン(ありがとうございます)」と挨拶を交わすなど、親日的でおもてなしの精神にあふれています。善良な人たちと触れ合うことで私は人間性を取り戻します。

 二つ目は、世界史を担当してきた私にとってカンボジアは特別な場所であるということです。カンボジアにはインドシナの歴史において、人類が忘れてはならない悲劇が詰まっています。周辺国との戦争によって、絶えず領土の変更があり、世界的な建造物も危機的状況に置かれていました。今も修復されないまま崩れそうな遺跡があちらこちらにあります。そして19世紀以降は大国の侵略に翻弄され、第二次世界大戦後はアメリカのベトナム政策に巻き込まれ、1975年以降はポル=ポト派の大虐殺を経験します。歴史を教える立場でなくとも知らないでは済まされない歴史が、ここにはあります。その歴史を現地に行くことで心に刻むのです。

 三つ目は何といってもグローバル・スタディーズで作成したオリジナル絵本を、現地に届けるという目的です。グローバル・スタディーズは、「世界を知り、平和とは何か、正義とは何かを問い、自らの生きる姿勢を考えること」を目的として2017年に開講した愛徳学園が誇る教科横断型・探究型の学校設定科目です。かつてカンボジアについて力を入れて授業テーマにしていた私が、愛徳学園に着任したときに、最も驚き感動したことが、こんな素晴らしい授業を実施している学校があるのか、ということでした。試行錯誤を繰り返し、現在の形でブックプロジェクトに取り組むようになってから今年で4年目。最初の年に59回生が作成した絵本をカンボジアに持参し、昨年は60回生のものを、そして今年は61回生の絵本を直接小学校に届けることが実現しました。これは非常に大きな動機となっています。

 ところで、国連開発政策委員会(Committee for Development Policy:CDP)が認定した基準に基づき、国連経済社会理事会の審議を経て、国連総会の決議により認定された、特に開発の遅れた国々のことを「後発開発途上国」と定義していますが、これには世界で44ヵ国が該当しています。地域別にみるとアフリカの32ヵ国が最多ですが、アジアも8ヵ国にのぼっています。このうち2026年に卒業予定の国はバングラデシュ、ラオス、ネパールで、カンボジアは2029年に卒業予定となっています。(※)

 このことからもわかるように、現段階でカンボジアは後発開発途上国からは卒業間近となっていますが、現実はどうなのでしょうか。これらの問題を自分事とするには、もちろんインターネットや書籍を通じてまず日本で調査・学習することが必要ですし、実際相当の情報がありますから知識は十分に得られるのですが、現地に行かないと「本当の姿」すなわち「真実」までは見えてこないのです。実感と確信のためには、現地に行き、その目で見、肌で感じることが重要です。そういうこともあり、今回私は現地の方たちの生活にも触れ、プロン小学校の校長先生にも直接質問をしました。何度かカンボジアに通っていることで見えてきたことは、一般的に公表されている数字や情報と現実は必ずしも一致しないということです。
 ですから、というわけではないのですが、ここで私はカンボジアスタディツアーを呼びかけたいと思います。できれば来年の夏休み、対象はここにいるすべての生徒と先生です。それは真理を探す旅、まさに究極の探究旅行です。

 物事の本質はなにか。そのことを常に考えたいと思うし、そのための情報やヒントはそれこそ毎日の授業でいくらでも提供されています。やはり愛徳学園の皆さんには、常に、この本物の姿を見る目を養ってほしいと思います。それはなかなか目に見えないし、見る―悟る―ためには時間のかかる作業を伴いますが、皆さんなら大丈夫。今学期も、いつもの誠実で真面目な姿勢を忘れず学び続けてくれればそれでよいのです。
 それでは皆さん、2学期も笑顔で、ともに学びましょう。

 

(校長 松浦直樹)

(※) 『外務省Ministry of Foreign of Japan』貿易と開発~後発開発途上国(LDC:Least Developed

Country)~https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ohrlls/ldc_teigi.htmlより

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