私は、人間力をつけるためには様々な苦労や経験が必要だと思います。そしてそれらは、すべてをひっくるめて「感動体験」と言いかえることができます。感動体験は、何もよいものや美しいものを見たときだけではなく、苦しいことや壁にぶつかった時、場合によっては仲間との意見の違いや衝突によっても得ることができます。波が立ち、風が吹くということです。それは時に苦しさを伴うかも知れません。しかしそういう「しんどい」プロセスを経るからこそ、その先にある感動はより大きくなるし、人間としても成長するのです。そして逆境にも強くなるでしょう。波風の立つ経験とは何か。それは感動や発見、ひとやものとの出会い、芸術やスポーツ、読書……とにかく固定された日常をゆさぶる体験そのものです。それらを真正面から受け止め、その手につかんだ時、本当の人間力が身につくのです。それは試験に合格したとかテストで何点を取った、などという小さなものではありません。
「波」と「風」の詰まった行事はたくさんありますが、今回は学園祭にフォーカスしてみましょう。クラスやクラブ、展示やステージを創り上げていく中で体験したことすべてが皆さんの成長につながったのではないでしょうか。インスタグラムをはじめとする愛徳生の笑顔を見てください。それが何よりの証拠です。
数え上げればきりがありませんが、企画運営に走り回り大活躍だった全校委員の皆さんを筆頭に、表紙絵に応募してくれた芸術家たちやビブリオバトルに出場した読書家たち、有志企画では勇気をもってステージで歌い、踊り、演奏したアーティストたち、創作ダンスを披露してくれた高1と高3の精鋭ダンサーズやオタマトーンズなど、ステージ発表は見る人をくぎ付けにしました。さらに、文化・芸術発表の双璧をなすのはESS部の魂をかけた英語劇と吹奏楽部の心のこもった演奏です。ESS部の英語劇はボランティアスタッフの登場も相まって『アナと雪の女王』を見事に演じ切りました。演出にはアイデアや工夫があり、どよめきがおこる場面も。吹奏楽部は高3生の引退演奏も兼ねており、引退する長女たちのスピーチは胸を打ちました。
その他、いつも安定のアナウンスをしてくれる放送委員の皆さん、入念なリハーサルを重ね、ステージでの素早い進行には頭が下がります。照明やステージ全体のボランティアスタッフの皆さんは見えないところでのサポートを本当にありがとうございます。同様に自由参加であった高3の皆さんが受付や様々なお手伝いを笑顔で務めてくれたことにも感謝です。模擬店は企画立案から当日のシフトまで、各学年の力を結集し、お互いを思いやった素晴らしい協力体制でした。見たいステージなどがあっても係や持ち場にとどまって誠実に務めを果たしてくれた人たち、来場者の皆さまにありったけのホスピタリティを注いでくれた誠実な愛徳生一人ひとりに感謝します。
この学園祭のもう一つの見どころは展示発表です。これはかつての「文化祭」等では当たり前のようにあった文化発表の王道ですが、愛徳学園では毎年必ず新しい展示発表を行います。各教科で見せる愛徳生のアイデアは見れば見るほど、噛めば噛むほどに味わい深いものでした。今も展示してありますので、学園にお越しの際はぜひ見ていただきたいと思います。
また学園祭を側面から援助してくださった、同窓会の皆さんや保護者の方々、そして、修道院のシスターたちも体をはって長時間ご協力をいただき、心より感謝いたします。
最後になりましたが、何といっても愛徳学園に足をお運びいただいたすべての来場者の皆さま、本当にありがとうございました。愛徳生の日頃の成果を感じていただけたでしょうか。私も数えきれない方々にお声掛けいただきましたが、そのほとんどが喜びと感謝に満ちたものでした。本来なら、もっと個別にお話をさせていただくところを、会釈だけで失礼してしまった方も多く、心残りです。またの機会にはぜひお話しできればと思います。受験生の皆様、少しでも愛徳学園の魅力に触れていただけたなら嬉しく思います。来年度、皆様が愛徳学園の制服に身を包んでいらっしゃることを想像しています。(校長 松浦直樹)

